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肩関節の内転に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

肩関節の内転運動は、大胸筋というが作用します。

その他にも、広背筋や大円筋などの筋肉が働き、自由度の高い肩関節の内転という運動に関与しています。

このページでは、肩関節の内転に作用する筋肉の種類と、その起始・停止、支配神経から拮抗筋までを詳しく解説します。

肩関節内転運動の概要

肩関節は、肩甲骨と上腕骨で構成される関節です。

これは狭義の肩関節と呼ばれていて、関節運動に関わる骨で見ると、肩甲骨と上腕骨以外にも、鎖骨・胸骨・胸郭がその運動に関わっていて、これら全てを含めて、広義の肩関節と呼ばれています。

肩関節の内転は、解剖学的肢位からでは体壁に当たり可動域が無いので、肩関節外転位から運動を開始する内転や、肩関節屈曲90°で行う水平内転で解説されることがほとんどです。

外転位からの内転は、外転運動で作った可動域を0°に戻すもので、水平内転では約40°ほどの可動域を持っています。

肩関節の内転運動は、矢状軸・前額面上での運動です。

肩関節の内転に作用する筋肉の一覧

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大胸筋 鎖骨・胸骨・肋骨 上腕骨結節間溝 外側胸筋神経
内側胸筋神経
C5 – C6
C6 – T1
広背筋 第6胸椎から第5腰椎
腸骨稜
上腕骨小結節稜 胸背神経 C6 – C8
大円筋 肩甲骨下角 上腕骨結節間溝 肩甲下神経 C5 – C6
小円筋 肩甲骨外側縁 上腕骨大結節 腋窩神経 C5 – C6
烏口腕筋 肩甲骨烏口突起 上腕骨骨幹部内側 筋皮神経 C5 – C7
三角筋前部
(水平内転)
鎖骨外側1/3 上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

肩関節の内転に作用する筋肉は、上の表の通りです。

ここでは肩関節外転位からの内転に働く筋肉と、肩関節水平内転に働く筋肉をまとめて記載しています。

外転位からの内転と言っても、立位で行う場合は上肢の重みで自然と内転してしまうので、イメージしにくい場合は、『外転位から抵抗下の内転運動』をしてみると、筋の収縮が分かりやすくなります。

肩関節内転の主動作筋

肩関節の内転運動は、大胸筋・広背筋・大円筋が主に働いて行われます。

ここでの主動作筋は、水平内転ではなく、純粋な肩関節の内転運動に働く筋肉です。

肩関節の水平内転時に作用する筋肉は、ページの後半に記載しています。

大胸筋の起始・停止・支配神経

大胸筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大胸筋 鎖骨・胸骨・肋骨 上腕骨結節間溝 外側胸筋神経
内側胸筋神経
C5 – C6
C6 – T1

大胸筋は、鎖骨に起始を持つ鎖骨部と、胸骨・肋骨に起始を持つ胸肋部の二部に分かれています。

鎖骨部と胸肋部を合わせると、胸郭の大部分に広い起始を持つ強力な筋肉です。

鎖骨部は外下方に、胸骨部は外方に、肋骨部は外上方に扇状に走行し、その全てが上腕骨結節間溝に集約して停止します。

支配神経は、鎖骨部を外側胸筋神経、胸肋部を内側胸筋神経がそれぞれ支配しています。

大胸筋は、腋窩を構成する筋肉としても知られています。

大胸筋は全体が収縮すると、上肢を体幹に引きつけ、肩関節の内転に強力に作用します。

その他にも、全体的な機能として肩関節の内旋や水平屈曲があります。

また、大胸筋は2部に分かれているため、走行によって異なる機能を持っています。

鎖骨部は、肩関節の屈曲初期に収縮する筋としても働き、胸肋部は肩関節の伸展運動に補助的に作用します。

広背筋の起始・停止・支配神経

広背筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
広背筋 第6胸椎から第5腰椎
腸骨稜
上腕骨小結節稜 胸背神経 C6 – C8

広背筋は、第6胸椎から第5腰椎・腸骨稜という広い起始を持ち、外上方に走行し、上腕骨小結節稜に停止する筋肉です。

支配神経は、胸背神経の支配を受けています。

広背筋は、肩関節の伸展筋としての機能が知られていますが、肩関節の内転にも作用します。

大胸筋と広背筋は、体幹の前後をそれぞれ走行し、上腕骨に停止します。

前面と背面の違いがありながら、その機能は肩関節の伸展・内転・内旋とよく似た作用を持っています。

また、大胸筋と共に腋窩を構成する筋肉としても知られています。

大円筋の起始・停止・支配神経

大円筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大円筋 肩甲骨下角 上腕骨結節間溝 肩甲下神経 C5 – C6

大円筋は、肩甲骨下角の外側から起こり、外上方に走行し、上腕骨結節間溝に停止する筋肉で、表面積は小さいですが厚みのある筋肉です。

支配神経は、肩甲下神経です。

広背筋の上部とはほぼ平行に走行し、腱は癒合して停止します。

大円筋の機能は、肩関節の内転と内旋です。

また、広背筋と似た走行をとることから分かるように、肩関節の伸展にも作用します。

肩関節内転の補助筋

肩関節の内転運動には、大胸筋や広背筋などの働きを、小円筋と烏口腕筋が補助しています。

それぞれの筋について、詳しく見ていきましょう。

小円筋の起始・停止・支配神経

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
小円筋 肩甲骨外側縁 上腕骨大結節 腋窩神経 C5 – C6

小円筋は、肩甲骨外側縁から起こり、上腕骨の外側に向かって走行し、上腕骨大結節に停止する筋肉です。

小円筋は回旋筋腱板を構成する筋肉で、その主な働きは、肩関節の外旋です。

またローテーターカフとして、自由度の高い肩関節を固定・保持する機能を持っています。

内転機能に関しては弱く、補助筋として作用します。

烏口腕筋の起始・停止・支配神経

烏口腕筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
烏口腕筋 肩甲骨烏口突起 上腕骨骨幹部内側 筋皮神経 C5 – C7

烏口腕筋は、肩甲骨烏口突起から起こり、下外側に向かって走行し、上腕骨骨幹部内側に停止する筋肉です。

支配神経は、筋皮神経で、主な作用には、肩関節の屈曲があります。

肩甲骨から上腕骨に付着している小さい筋肉ですが、その走行から肩関節内転の補助筋として作用します。

肩関節水平内転に作用する筋肉

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
大胸筋鎖骨部 鎖骨 上腕骨結節間溝 外側胸筋神経 C5 – C6
大胸筋胸肋部 胸骨
肋軟骨
上腕骨結節間溝 内側胸筋神経 C6 – T1
三角筋前部 鎖骨外側1/3 上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

肩関節の内転には、解剖学的肢位での内転の他に、肩関節屈曲位から行う水平内転があります。

水平内転では、通常の内転でも主動作筋として機能する大胸筋が作用します。

また、三角筋の前部繊維は、肩関節の屈曲と共に、内転にも作用します。

肩関節内転の拮抗筋

肩関節の内転運動の拮抗筋は、肩関節の外転に作用する三角筋や棘上筋です。

外転運動も、側方挙上時と水平外転時で作用する筋肉が異なりますが、三角筋はどちらの場合でも収縮します。

肩関節内転運動の拮抗筋としては、三角筋が最も強力です。

三角筋の起始・停止・支配神経

三角筋

筋肉名 起始 停止 支配神経 Lv
三角筋
前部
鎖骨外側1/3 上腕骨骨幹部
三角筋粗面
腋窩神経 C5 – C6

肩関節の内転に作用する筋肉のまとめ

肩関節の内転に作用する筋肉には、大胸筋や広背筋など、体幹の比較的大きな筋肉が働いています。

肩関節は自由度の高い関節ではありますが、体幹に上肢を引きつける力も相当強く働くことが分かります。

体幹に向かって救心的に筋の緊張が強くなると、屈曲や外転など遠心方向への運動の際に、筋がうまく伸張されず、十分な可動域が得られません。

バランス療法では、肩関節内転筋と外転筋の緊張差、そして内転筋の左右の緊張差を検査し、拮抗筋との緊張差・左右の緊張差を整えるように施術します。

内転筋の緊張は、肩関節屈曲検査で確認するのですが、肩関節の屈曲可動域が少ない側を、内転筋の緊張側と判断します。

緊張側に対しては、『外側胸筋神経からの調整』などの手技を用いて、筋の弛緩を狙い、手技の後は肩関節の可動域を検査して、内転筋が十分に伸張し可動域が左右対称になったかを確認します。

肩関節内転筋の調整をすることは、肩関節の可動域だけでなく、姿勢や呼吸運動にも関わることなので、手技の際は筋の走行や機能をイメージしながら行うと良いでしょう。

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