膝関節伸展に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説
膝関節の伸展運動は、大腿四頭筋と呼ばれる膝関節伸展筋群が主動作筋となって行われます。
このページでは、膝関節の伸展に作用する全ての筋肉の、走行や起始・停止・支配神経・拮抗筋について詳しく解説します。
膝関節伸展運動の概要
大腿骨・膝蓋骨・脛骨・腓骨からなる膝関節は、解剖学的基本肢位では伸展位で、最大屈曲位から関節運動を開始した場合、正常だと135°の可動域を持っています。
膝関節の伸展運動は、前額軸・矢状面上の運動です。
膝関節の伸展に作用する筋肉の一覧
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
大腿四頭筋 | ||||
1.大腿直筋 | 下前腸骨棘 寛骨臼上縁 |
脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
2.中間広筋 | 大腿骨前面 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
3.内側広筋 | 大腿骨粗線内側唇 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
4.外側広筋 | 大腿骨粗線外側唇 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
大腿筋膜張筋 ( 膝屈曲90°未満の時 ) |
腸骨稜 | 腸脛靭帯 | 上殿神経 | L4 – S1 |
膝関節の伸展に作用する筋肉には、上の表のような筋肉があります。
それぞれの筋肉についてさらに詳しくみていきましょう。
大腿四頭筋
大腿四頭筋は、大腿直筋・中間広筋・外側広筋・内側広筋の4つの筋肉からなる筋肉です。
4つの筋肉の中で、大腿直筋だけが腸骨から起こり、股関節と膝関節をまたがって走行する2関節筋です。
中間・内側・外側広筋の3つの筋肉で、大腿骨を前面・両側面から覆うように走行しています。
4つの筋肉は、最終的に膝蓋腱という1つの腱になり、脛骨粗面に停止します。
大腿四頭筋の働きは、人体の筋肉の中で最も強力です。
バランス療法では、必ずこの筋肉の機能を分析し、左右対称に機能するようにアプローチします。
大腿直筋の走行と支配神経
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
大腿直筋 | 下前腸骨棘 寛骨臼上縁 |
脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
大腿直筋は、大腿四頭筋の中で唯一腸骨から起こる2関節筋で、4つの筋肉の中で最も長い走行を持つ筋肉です。
膝関節の伸展運動に作用しますが、股関節をまたいで走行しているため、股関節の屈曲に作用します。
中間広筋の走行と支配神経
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
中間広筋 | 大腿骨上2/3 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
中間広筋は大腿直筋の背側を走行する筋肉です。
起始が大腿骨にあるので、股関節の運動には関与せず、膝関節の運動のみを行う単関節筋です。
走行は大腿直筋と似ていますが、膝蓋靱帯となる部分では中間から外側を覆うように停止します。
内側広筋の走行と支配神経
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
内側広筋 | 大腿骨粗線内側唇 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
内側広筋は、細かく分類すると長内側広筋と斜内側広筋に分かれていて、2つの筋肉を合わせて内側広筋と呼んでいます。
それぞれ起始・停止が微妙に異なりますが、大腿骨の内側にある粗線内側唇から起こり、膝蓋腱となって脛骨粗面に停止します。
大腿骨の内側を覆うように走行し、膝蓋腱の内側の大部分を構成しています。
外側広筋の走行と支配神経
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
外側広筋 | 大腿骨粗線外側唇 | 脛骨粗面 | 大腿神経 | L2 – L4 |
外側広筋は、大腿骨の外側を走行する筋肉です。
ただ、大転子の下部にも起始部を持っているので、前面からやや外側に回り込むように走行しています。
大腿四頭筋の中では、大腿直筋に次いで広い面積を持つ筋肉で、膝蓋腱の外側を構成しながら、脛骨粗面に停止します。
大腿筋膜張筋は補助的に作用する
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
大腿筋膜張筋 | 腸骨稜 | 腸脛靭帯 | 上殿神経 | L4 – S1 |
大腿筋膜張筋は、直接膝関節の伸展に作用する筋肉ではありません。
主な作用として股関節の外転や内旋に働きます。
ただし、膝関節伸展時に収縮することで、腸脛靭帯を介して膝関節に作用し、伸展の補助筋として作用しています。
特に膝関節屈曲90°以上の角度から伸展させようとする際に収縮すると言われています。
膝関節伸展の拮抗筋
膝関節伸展の拮抗筋として働くのは、ハムストリングスを始めとした膝関節の屈曲筋群です。
主な拮抗筋は、ハムストリングスを構成する以下の3つの筋肉です。
- 大腿二頭筋
- 半腱様筋
- 半膜様筋
その他にも、薄筋・縫工筋・膝窩筋・腓腹筋なども、膝関節の屈曲を補助する筋肉なので、膝関節伸展筋とは拮抗する作用を持ちます。
バランス療法では、伸展筋と屈曲筋の緊張差を左右で比較する検査を行いますが、伸展の拮抗筋としてメインに考えるのは、やはりハムストリングスです。
ハムストリングスの走行と支配神経
筋肉名 | 起始 | 停止 | 支配神経 | Lv |
---|---|---|---|---|
大腿二頭筋長頭 | 坐骨結節 | 腓骨頭 | 坐骨神経 | L5 – S2 |
大腿二頭筋短頭 | 大腿骨粗線 | 腓骨頭 | 坐骨神経 | L5 – S2 |
半腱様筋 | 坐骨結節 | 脛骨骨幹部 | 坐骨神経 | L5 – S2 |
半膜様筋 | 坐骨結節 | 脛骨内側顆 | 坐骨神経 | L5 – S2 |
ハムストリングスは、大腿二頭筋と半腱様筋・半膜様筋を総称した呼び方です。
坐骨から起こり、左右に走行が分かれ、外側を走行する大腿二頭筋を外側ハムストリングス、内側を走行する半腱様筋・半膜様筋を内側ハムストリングと呼びます。
ハムストリングス全体で見ると、坐骨から下腿骨までの長い走行を持ち、膝関節の屈曲に強力に作用します。
膝関節の伸展に作用する筋肉のまとめ
膝関節の伸展運動は、大腿四頭筋という強い筋の作用によって行われます。
バランス療法では、この筋肉の緊張を拮抗筋であるハムストリングスの働きと比較して調べます。
さらに、左右で緊張の度合いを比較し、緊張が強い側を重心機能側としています。
手技を行う前には、必ずこの筋肉の状態を把握して、過度に緊張している場合は、膝関節伸展筋を弛緩させるための手技を行います。
セミナーでも、この筋肉にアプローチする手技はいくつかあるので、筋の走行を頭の中でイメージしながら、効果的な方向に関節を操作できるように意識して練習をするようにしています。