東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

身体の力が抜けない患者さんに対していかにリラックスさせて脱力下で施術するか?

日々手技療法で患者さんの施術をしていると、体がとても緊張し、力が抜けない患者さんに出会う事がよくあります。

施術者がいくら『力を抜いて下さいね』と声かけしても、そういった患者さんはなかなか力が抜けるものではありません。

手技療法のセミナー中でも、どうやって力を抜かせるか?というのは、よく話題に上がります。

今回の投稿では、そういった患者さんに治療する際に、力を抜いてもらうコツや、どうして力が入ってしまうか?について考えてみたいと思います。

どうして必要以上に身体に力が入ってしまうのか?

この問題は、理学療法・鍼灸・マッサージ・整体・カイロプラクティックなど、様々な徒手医療を行う現場で誰もが感じている事ではないでしょうか?

もしかしたら、アロマやエステサロンのセラピストも同じ様に感じている人がいるかもしれません。

身体に力が入っている理由はいくつかあると思うので、思いつくだけ書いてみたいと思います。

初めて施術を受ける場合や治療院の空間に対して緊張している

複数回施術を受けに来ている患者さんと、初めて施術を受けに来た患者さんでは、もちろん初めて施術を受けに来た患者さんの方が、身体の力は抜けにくくなります。

また、その患者さんがこれまでに手技療法を受けた事がないという場合は、なおさらです。

施術者にとっては、当たり前の様に身体に触れ、筋肉や関節にアプローチしますが、受けている人は全く予備知識がないため、これから何をされるのか?どうしていれば良いのか?

という事が分かりません。

ただ、こういった場合は、実際に身体を動かす前の声かけや、施術内容の説明をする事で、回避できます。

また、施術を受けていく内に患者さん自身が慣れて、リラックスできる様になるので、特に問題はありません。

現在の姿勢や肢位に痛みや違和感がある

これは患者さんの表情や様子を注意深く見ていると気づく事があるのですが、今とっているその姿勢に、痛みや違和感がある場合があります。

当然治療家としては、その姿勢に痛みがあるか尋ねると思いますが、患者さんの心理として、『多少のことは我慢しないといけない』『施術は心地よいだけのものではなく、痛みを伴う』と、どこかで考えている人は案外多いです。

簡単な例を挙げると、腰痛や坐骨神経痛を持っている人は仰向けになっている事が辛い場合が多いです。

腰痛を持っている人の場合は、仰向けになると痛みがあるという人はもちろん、『腰が反って浮いている様な感じがする』という人が多いです。

坐骨神経痛みを持っている人は、仰向けになって膝関節が伸展されてしまうと、ラセーグ兆候の様な神経痛が出て、膝を伸ばす事ができない事があります。

そのため、仰向けになったら膝を屈曲位に誘導して挙げるなどの工夫が必要です。

このほかにも、腹臥位になると頚が痛い・胸が圧迫される感じがするなど、人によって多種多様なので、患者さんの身体の力が抜けない場合は、姿勢を変えてあげる事で解消される事があります。

細かな身体の緊張を手で読み取って、うまく誘導できると理想的ですね。

日常的に交感神経が優位になっていてリラックスできない

施術者として一番大変なのはこのタイプで、環境や痛みに関係なく常に緊張しているという患者さんです。

こういった患者さんは、上記に挙げたタイプよりも、身体の緊張感が強い様に思います。

施術中に感じる特徴としては、例えばこちらが腕を軽く持ち上げただけでも、一緒に力を入れて腕を持ち上げて来ます。

通常なら『力を抜いて下さいね』と言うと、力を抜いてくれますが、緊張が強い場合はこちらが手を離しても、その位置を自力でキープしようとしてしまいます。

また、現在自分が力を入れていると言うことにすら、自覚がない場合もあるので、誘導するのが大変です。

そういった患者さんに身体の緊張感が強いと言うことを伝えると、自分でも思い当たる節がある様で、次の様な特徴を聞く事ができます。

  • 常に肩に力を入れて生活している
  • ふと気づくと歯を食いしばっている
  • 朝起きた時から疲れている
  • 字を書くなどの何気ない動作も必要以上に力が入る

この様な場合は、施術を受けている時間以外にも、常に緊張状態にある事が伺えます。

施術をすることも大変ですが、個人的にはこういったタイプの人は身体に不調をきたす割合が多い様に感じます。

僧帽筋を触診してみると、筋肉が膨隆していたり、硬結があったりと、実際に身体にも変化が表れています。

手技療法家としては、こういった患者さんの全身的な緊張を緩めてあげて、本来の緊張・弛緩のバランスが整った身体に戻し、スムーズな身体の動きが獲得できる様に努めていきたいところです。

ただ、力を抜いてもらうことは一筋縄ではいきません。

施術を受ける姿勢や、声かけなどを心がけることはもちろん、身体に触れて実際に施術する際の触り方にも最新の注意を払わなければいけません。

具体的には、できるだけ指尖を当てずに、接触する面積を広げる様に心がける事や、関節を動かす際にも関節面や運動方向が、本来の位置からずれない様に慎重に動かすといった所がポイントだと感じています。

どうして脱力下で施術をしないといけないの?

手技療法家が、患者を脱力させることにこだわるのは、もちろん相手をリラックスさせたいと言う事が大きいですが、それだけではありません。

施術の効果を最大限に高めるためには、相手の身体に余計な緊張を起こさせない事が必要不可欠です。

どれだけ素晴らしい理論がある手技療法があっても、こちらが思う通りに身体の操作ができないと、その効果は途端に薄れてしまうでしょう。

患者さんの身体を動かそうとした時に、自分が目的としている関節の運動方向や、筋肉以外に力がかかっていると言うことは、狙っている部分に狙った動きができないと言うことになります。

こういった事は、とても数値化できる事ではありませんが、一見同じ様な手技で施術していても、施術者によって効果が全く違うという現象が起こるのは、いかに上手く狙った通りの操作ができているか?

という点に隠れている様に感じます。

日々の施術の中で、細かな事でも見逃さない様に心がけていきたいですね。

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