2019年2月の大阪セミナーは仰臥位の下肢の牽引を行いました
2019年2月3日に上本町で開催した手技セミナーは、仰臥位の下肢の牽引をテーマに行いました。
今回のセミナーには、リラクゼーションをされていた男性に見学に参加して頂きました。
下肢の牽引は、伏臥位と仰臥位の2種類があり、どちらも非常によく用いる手技です。
特に今回の仰臥位の牽引は、バランス療法の手技の中でも、重要で必ず習得しておきたい手技になります。
下肢後面の筋の緊張を検査して調整する
仰臥位の牽引は、下肢後面の筋の緊張を調べて、緊張した側に対して弛緩を狙って行います。
そのため、まずは下肢の検査を行い、筋緊張の左右差を調べます。
膝関節の検査で屈曲可動域を検査する
下肢の後面にある筋の緊張を調べるためには、膝関節の屈曲検査を行い、その可動域を調べます。
膝関節を他動的に屈曲していくと、屈曲可動域に左右差が確認できます。
この検査で膝関節の屈曲可動域小さい側は、膝関節伸展筋の緊張が強く、反対に大きい側は膝関節屈曲筋の緊張が強いと考える事ができます。
膝関節の屈曲に作用する筋肉については、こちらのページにまとめています。
膝関節の屈曲に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説
膝関節を屈曲させる筋肉は、坐骨神経系の支配を受けている筋肉がメインなので、膝関節の屈曲筋が優位な側は、坐骨神経系の筋が緊張していると考える事ができます。
股関節の内・外旋の左右差を調べる
膝関節屈曲筋の緊張差が判断できたら、今度は股関節の検査をして、内・外旋の緊張差を調べます。
これは、股関節の内・外旋傾向から、牽引する下肢の向きを決めるのに必要です。
股関節の外転・外旋筋の緊張が優位な側は、股関節を内転・内旋位にして牽引を行います。
反対に内転・内旋筋の緊張が優位な側は、股関節を外転・外旋位にして牽引を行います。
坐骨神経系の筋の緊張の弛緩を狙って手技を行う
膝関節の検査で手技を行う下肢、股関節の検査で牽引を行う方向性が分かったら、手技を行います。
手技は、下肢を牽引することによって、緊張した坐骨神経系の筋全体を伸張させるように行います。
手技の手順は以下の通りです。
- 足関節部を把持し下肢を持ち上げる
- 股関節の検査を元に内転 or 外転する
- アキレス腱の内側を固定する
- 牽引を行う
上記の手順を、受け手の呼吸のタイミングを見ながら手技を行います。
牽引を行ったら、3回 – 5回の呼吸を待って、下肢を元の位置に戻し手技を終えます。
股関節や足関節を捻らないように注意する
下肢の牽引の注意点としては、下肢を持ち上げる・股関節の内転・外転操作をする・下肢を牽引する際に、関節を捻らないように注意することです。
股関節や足関節が少しでも捻れると、受け手の力が抜けなくなりますし、下肢の軸が変わってしまうので、大腿後面の筋がうまく伸張されません。
下肢の持ち上げから、牽引操作まで下肢を捻らないように、術者の身体の使い方には十分に注意して行いましょう。
受け手の下肢に対して、術者の身体を中心に合わせ、保持・牽引する両手を下肢に対して左右対称にセットして、牽引を行うことが重要です。
末梢方向への牽引にならない様に注意する
バランス療法で行う下肢の牽引は、今回の仰臥位も伏臥位で行う牽引も、ただ末梢方向へ下肢を引っ張る事を目的とした手技ではありません。
緊張した下肢後面の筋を、呼吸と共に伸張させることにあります。
これを意識しないと、下肢をただ力任せに引っ張るだけになってしまい、検査の結果得られた、筋の緊張の左右差を整えることができません。
下肢後面の筋を全体的かつ同時に伸張させるには、股関節・膝関節・足関節に連動性のあるスムーズな操作が必要になります。
特にこの手技で一番大きく動くのは、足関節なので、足関節が底屈位から背屈方向に操作できる様に、術者の身体の使い方を意識しましょう。
手技を終えたら再検査を行う
下肢の牽引を終えたら、手技の効果を確認する為に、再度検査を行います。
Basicコースでこの手技を初めて行う受講生は、最初と同じく膝関節の屈曲検査を行い、緊張していた坐骨神経系の筋の緊張が弛緩され、左右の可動域差が少なくなっているかを確認します。
下肢の牽引を複数回受講している受講生は、下肢の検査はもちろん、下肢の筋の左右差が整ったことで、それが全身の筋・骨格のバランスの変化にまで波及しているかを、肩関節の検査で確認します。
仰臥位の牽引のまとめ
バランス療法では、全ての手技が細部だけではなく、全身の筋機能のバランスを整える為に行います。
その中でも、今回学んだ下肢の牽引は、下肢の大きな神経系に対してアプローチする手技なので、全身に与える影響が大きくなります。
実際の施術の中でも、身体のバランスを変える大きなきっかけになる手技なので、必ずと言っていいほど、用いる手技です。
手技を行う為には、手技の前の正確な検査が必要ですし、効果的な手技ができる様になるまで、股関節・膝関節・足関節のコントロールを練習する必要がありますが、身につければ大きな効果が期待できる手技です。
下肢の持ち上げ方、内・外転の操作・牽引の仕方をしっかり練習して、習得していきましょう。