2018年12月の大阪セミナーは下肢の外転操法をテーマに開催しました
2018年12月9日に大阪上本町で開催した手技セミナーは、股関節の内転筋を弛緩させる目的で行う、下肢の外転操法をテーマに行いました。
今回のセミナーには、東京セミナーの受講生が1人参加してくれたので、大阪セミナーのメンバーも良い刺激を受けたのではないでしょうか。
また、受講生の症例発表では『ダウン症の女の子の便秘』を改善する為に、バランス療法を始め、様々な角度から改善に取り組んだ例を報告してもらいました。
しっかり改善の傾向が見られたことで聞いていて嬉しい気持ちになったことはもちろん、施術の視点やアプローチの方法に関しても、参加者全員がとても勉強になったのではないかと思います。
今回のセミナーのテーマが、骨盤や周囲の筋に関係が深い手技ということも相まって、実りのあるセミナーになりました。
股関節内転筋の弛緩を狙う下肢の外転操法
今回のセミナーで学んだ下肢の外転操法は、股関節内転筋の緊張側に対して、外転操作をすることで、内転筋の緊張を弛緩させることを目的に行う手技です。
内転筋をストレッチして強く伸張させるわけではなく、股関節周囲の筋が緊張しない様に慎重に外転操作を行い、受け手がリラックスしていられる角度で下肢を保持します。
自然な外転運動を供給することで、緊張していた内転筋の弛緩を狙うのが、下肢の外転操法です。
股関節内転筋の緊張を左右で比較する
バランス療法では、手技を行う前に、必ず筋の緊張差を比較する検査を行います。
基本的には全身の評価を行いますが、今回の手技を行う上で必要な検査は、股関節の内・外転筋の緊張を調べる検査です。
バランス療法では、股関節の内転・内旋、外転・外旋がそれぞれ協調して働いていると考えているので、股関節の外旋検査から内転筋の緊張を判断します。
今回の手技の場合、他動的な股関節の外旋検査で、可動域の小さい側が内転筋の緊張が強く、股関節の外旋可動域が大きい側が外転筋の緊張が強いと判断します。
内転・内旋筋の緊張が強いと、他動的な関節運動をした時、筋の伸張が十分に得られず、外旋可動域は小さくなります。
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内転筋の緊張が強い側の下肢に手技を行う
検査で内転筋の緊張差が判断できたら、いよいよ手技を行います。
手技の手順は、以下の通りです。
- 足関節部を把持する
- 回旋を与えない様に持ち上げる
- 呼吸のタイミングを見て外転・外旋操作を行う
- 操作に抵抗を感じたら保持する
- 呼吸のタイミングを見て元に戻す
内転筋の緊張が強い身体にこの手技を行うと、1回の操作では十分な可動域が得られません。
その場合は、一度内転操作を入れてから、再び外転・外旋操作を行い、数回繰り返すことで徐々に可動域を広げていきます。
下肢に内旋を与えない様に注意する
この手技を行う上で、最も気をつけないといけないのは、下肢を内旋方向に操作してしまうことです。
下肢を外転・外旋する手技なのですが、慎重に操作を行なっていても、下肢を持ち上げる際や外転操作の際に、内旋方向に力が加わってしまいます。
持ち上げるときは、下肢の軸をしっかりとイメージして、その軸を捻らない様に、操作しましょう。
また、外転操作の際は下肢は外転角度に合わせて自然に外旋方向に倒れてくると言うことも念頭に置いて操作しましょう。
ここで術者に余計な力が入っていると、自然に外旋する下肢を中間位で止めてしまったり、反対に内旋方向に捻ってしまうことがあります。
ただでさえ内転・内旋筋が緊張している側の下肢なので、緊張側への動きは十分に注意して手技を行いましょう。
下肢の外転操法のまとめ
下肢の外転操法をうまく行えば、緊張した内転筋は弛緩し、拮抗筋である外転筋とのバランスを整える事ができます。
手技の後に再検査をしてみると、股関節の外旋可動域が左右対称になっていることが確認できると思います。
股関節は人体で最大の関節ということもあり、周囲には強力な筋が付着しています。
内転・内旋筋の緊張が強いと、股関節の可動性が悪くなることはもちろん、本来の位置から内向きになってしまいます。
内転・外転筋の緊張差を整えることは、下肢の左右の安定を得るためにはとても大切です。
その他にも、近接部位である骨盤のにも大きな影響を与えるので、股関節周囲の筋の左右差を整えることは、全身の筋骨格のバランスを整える上でも重要です。
今回学んだ下肢の外転操法は、無理なく内転筋の緊張を緩和させることができるできる手技なので、積極的に取り入れていきましょう。