東京と大阪で開催している手技セミナーの内容と人体の考察

2018年10月の大阪セミナーは肩関節にアプローチするターニングという手技を行いました

2018年10月14日に大阪上本町で開催した手技セミナーは、肩関節周囲の筋からバランスを調整する『ターニング』という手技を行いました。

今回のセミナーには、普段から参加されている柔道整復師・鍼灸師・整体師といったセラピストの他にも、歯科医師の方3名に参加して頂き、とても有意義なセミナーになりました。

肩関節の屈曲筋と伸展筋を調整するターニング

バランス療法のセミナーで学ぶ、ターニングという手技には、以下の2種類があります。

  • 肩関節伸展筋の緊張を弛緩させ屈曲筋の機能を促す
  • 肩関節屈曲筋の緊張を弛緩させ伸展筋の機能を促す

上肢の検査で、肩関節の可動域を左右で比較すると、肩関節に屈曲機能の優位な側と、伸展機能の優位な側があることが分かります。

可動域の差で分かる上肢の筋のアンバンランスに対して、ターニングという手技を使って調整し、左右の筋機能の差を整えます。

今回のセミナーでは、肩関節の伸展機能が優位に働き、屈曲可動域が少ない側に対して行うターニングを学びました。

肩関節の可動域を検査し筋のバランスを調べる

手技を行う前に、まずは肩関節の検査を行い、どちらの肩関節に対して手技を行うかを決定します。

左右の肩関節を同時に他動的に屈曲していき、慎重に可動域の差を調べます。

肩関節の屈曲を他動的に行なった場合、肩関節が屈曲されていくにしたがって、肩関節の伸展筋は伸張されていくことになります。

伸展筋の緊張が強い側の肩関節は、屈曲の途中で抵抗を感じ、結果肩関節の屈曲可動域が小さくなります。

反対に、伸展筋の緊張が弱い側は、屈曲運動に対して抵抗なく筋が伸張されるので、肩関節の屈曲可動域は大きくなります。

これによって、肩関節伸展筋の緊張差が判断できます。

今回の手技は、肩関節伸展筋の緊張を取り、屈曲筋の機能を促すために行うので、検査で肩関節の屈曲可動域が少ない側に対して行います。

肩関節伸展筋については、こちらの記事にまとめているので、復習にご覧ください。

肩関節の伸展に作用する筋肉の種類とその起始・停止・支配神経・拮抗筋を解説

伸展筋が優位な肩関節に対して手技を行う

肩関節の検査で、左右の筋肉の緊張差が判別できたら、伸展筋の緊張が優位な側に対して、手技を行います。

術者は、仰臥位の受け手の頭側に座りポジションを取ります。

片側の肩関節に手技を行うので、どうしてもポジションを手技を行う側に取ってしまいがちになりますが、受け手の正中線上に座るように注意します。

ポジションが決まったら、以下の手順で手技を行います。

  • 同側の手で受け手の手関節やや近位を持つ
  • 肩部正中線上に大きく肩関節を屈曲させる
  • 肩関節の屈曲と並行して肘関節を伸展させる
  • 肘関節の伸展と並行して手関節をやや掌屈させる
  • 肩関節に十分な屈曲を供給したら元に戻す

この手順を呼吸のタイミングを見ながら、3回から5回ほど繰り返します。

肩関節の他動的な屈曲運動を大きく行うことがポイントですが、無理に肩関節を引っ張らず、抵抗を感じない範囲で動かしていきます。

最初は少ない範囲でしかうごかせなかったとしても、うまく屈曲運動が促されていくと、伸展筋が弛緩し、可動域は大きくなっていきます。

手技を終えたら再び肩関節の可動域を検査する

手技を終えたら、最初に行なったように、肩関節の可動域を検査して、筋のバランスがどのように変化したかを確認します。

手技の目的通り、肩関節伸展筋の緊張を緩和させることができていれば、屈曲運動を抵抗なく行うことができるようになっていて、肩関節の屈曲可動域は左右対称になります。

反対に、最初と同じく肩関節の屈曲可動域に差があるという場合は、肩関節の伸展筋がうまく伸張されなかったということになります。

手技の際に、以下のような事がなかったかを考え、再度手技を行います。

  • 肩関節に内旋・外旋などの捻じれがなかったか
  • 肩関節を無理に牽引していないか
  • 肩・肘・手関節が連動しているか
  • 呼吸のタイミングが間違っていないか
  • スムーズに戻せているか

見た目には、肩関節の屈曲運動を繰り返すだけに見えますが、可動範囲の広い肩関節に対して、肩部正中線上に純粋な屈曲運動を行うというのは、案外難しいものです。

術者の身体の使い方に注意しながら、何度も練習を重ねると、徐々にうまく動かせるようになっていきます。

今回の手技のまとめ

今回行なったターニングという手技は、肩関節の伸展筋の緊張を取り、屈曲機能を促す事を目的にした手技です。

もちろん、肩関節周辺に主訴を持つ場合にも使う手技ですが、上肢の筋機能を左右対称に整えるという意味では、幅広い場面で有効な手技です。

肩関節伸展筋には、広背筋という人体で最も大きな筋があるので、広背筋の緊張差を整える事ができると、肩関節はもちろん、全身の筋肉のバランスに与える影響は大きいのではないでしょうか。

症例報告では、この手技を腰痛に用いたという例もありましたが、全身を整えるという意識で、積極的に取り入れていきたい手技です。

肩関節の屈曲運動をうまく供給できるように、しっかり練習していきましょう。

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