2018年9月の大阪セミナーは胸筋神経からの調整を行いました
2018年9月9日に大阪上本町で開催した手技セミナーは、胸筋神経からの調整という手技をテーマに行いました。
胸筋神経の調整は、主に緊張した大胸筋を弛緩させる目的で行う手技で、大胸筋の走行に沿って刺激を与えていきます。
優しい刺激の手技ではありますが、大胸筋という体幹の大きな筋の働きを変化させることができる手技です。
肩関節の検査で大胸筋の左右差を比較する
今回の手技は、大胸筋の緊張を緩めるために行うので、まずは左右を比較して、緊張している側を判断します。
検査は、肩関節の屈曲検査で行い、屈曲可動域の少ない側を大胸筋の緊張側としています。
大胸筋の働き
大胸筋は一部肩関節の屈曲にも働きますが、全体の機能としては肩関節の内転や内旋があります。
大胸筋が過度に緊張すると、肩関節は内転・内旋位になり、上肢は体幹に引きつけらえるようになります。
肩関節の屈曲可動域で大胸筋の緊張を調べるのは、肩関節の屈曲の後半に上腕骨の外旋が必要だからです。
大胸筋が緊張していると、肩関節のスムーズな屈曲が得られず、可動域には左右差が表れます。
大胸筋は肩関節の運動の他にも、呼吸運動にも関与する筋肉であるため、左右の緊張差を取り、本来の機能を取り戻すことは、日常生活でもスポーツにおいても大切です。
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大胸筋の緊張側に手技を行う
大胸筋の緊張側が判別できたら、筋の緊張を弛緩させるために、今回のセミナーのテーマである胸筋神経からの調整を行います。
術者は仰臥位の身体に対して、大胸筋の緊張側に座位でポジションを取ります。
そして、片方の手を腹部に置き、もう片方の手で大胸筋の走行に沿って順番に刺激を与えていきます。
呼吸のタイミングを見ながら、以下の手順で手技を行います。
- 側胸壁から大胸筋胸肋部を触れる
- 胸骨から大胸筋の内側部を触れる
- 鎖骨下から大胸筋鎖骨部を触れる
どれも押圧が強くならないように、優しく触れるように注意します。
3点全てを触れ終えたら、腹部に置いた手も呼吸のタイミングを見ながら離します。
手技を終えたら、最初と同じように肩関節の屈曲検査を行い、可動域に左右差がなくなっているかを検査します。
手技の前よりも左右差が改善していたら、大胸筋の緊張が緩和されたというように考えます。
身体に触れる手の面積に注意する
胸筋神経からの調整は、体幹の前面に触れるとてもデリケートな手技です。
手技を受けていると分かりますが、触れる場所の少しの違いで、身体がうまくリラックスできたり、反対に刺激に対して違和感を覚えたりします。
うまく大胸筋に刺激が入れば、受けての身体はリラックスし、呼吸が深く入るようにな流ので、触れ方には細心の注意を払います。
ポイントとしては、相手の身体に触れる手掌や指の面積を出来るだけ広くすることです。
触れる部分の面積が小さく狭いと、少ない力で触れたとしても、受けては刺激を点に感じてしまいます。
相手の身体に沿って触れる手や指を可能な限り広く触れるように意識しましょう。
術者は前傾しないように注意する
どの手技でも同じですが、胸筋神経の調整の際も術者は自分の姿勢に注意します。
今回の手技の場合は、受け手との距離が非常に近い上に、触れる場所が身体の中心に近いので、術者は前傾姿勢になりやすくなります。
前傾姿勢のまま手技を行うと、優しく触れようとしても圧が強くなってしまいます。
また、受け手にとっても圧迫感があるので、無意識に身体が緊張してしまいます。
手技を行う前に、相手との距離感や座る位置を微調整し、身体を起こして視野を広くもち、それから手技に入るようにしましょう。
胸筋神経からの調整のまとめ
今回の手技は、大胸筋に沿って体幹に優しく触れる手技です。
相手に緊張感を与えないように、注意を払いながら手技を行えば、受けての身体はとてもリラックスします。
肩関節の可動域が改善することでも大胸筋の過度な緊張が取れたことが確認できますが、何より手技を行なっている最中に相手の呼吸が深くなるのを確認できます。
特に身体の力がなかなか抜けないという場合には、関節を動かして行う手技よりも、今回の手技が効果的です。
刺激を与える場所は3箇所ありますが、状況に応じて鎖骨下だけ、側胸部だけというように使い分けてるのも有効です。
いかに相手に不快感を与えず、リラックスさせることができるかがこの手技のポイントになるので、手技を行うポジションや姿勢、触れる手に注意して練習しましょう。