2018年7月の大阪セミナーは肩関節の屈曲筋を調整する手技を行いました
2018年7月8日に大阪上本町で開催した手技セミナーは、肩関節の屈曲筋を調整する手技をテーマに行いました。
今回の手技は、肩関節の屈曲筋が優位に働いている側の上肢にかける手技で、緊張した肩関節の屈曲筋を弛緩させ、屈曲筋と伸展筋のバランスを整えるために行います。
動かす範囲はほんのわずかですし、身体にかかる負担もほとんどありませんが、手技を手順通りに行うと、肩関節の動きが変化することを検査で確認できます。
肩関節の検査で屈曲可動域を調べる
手技を行う前に、左右の肩関節の可動域を調べて、可動域から筋の緊張差を把握します。
今回の手技は、肩関節屈曲筋が優位に働いている側に行う手技なので、屈曲可動域が大きい側に手技を行います。
術者が手関節部を持ち、肩関節をゆっくりと屈曲方向に動かしていくと、屈曲していく軌道の途中でどちらかの肩に抵抗を感じます。
これは、屈曲運動に対して、拮抗筋である伸展筋が緊張しているために起こると考えていて、慎重に動かしていかないとこの抵抗感を感じることができません。
抵抗がある側の肩は、当然肩関節の最終可動域まで屈曲してこないので、こちらを肩関節の伸展筋が優位に働いている側、反対側の肩を屈曲筋が優位に働いている側とします。
肩関節の屈曲筋と伸展筋
肩関節の屈曲筋と伸展筋の緊張差を左右で比較する検査ですが、屈曲運動に抵抗する筋肉として、広背筋が挙げられます。
また、可動域の良い側は反対側と比べて、肩関節の屈曲筋である三角筋(特に前部)が緊張していると考えることができます。
手技がを行なったあとに、屈曲筋の緊張が緩和されていれば、左右の筋のバランスがとれて、再度検査をすると左右の可動域に差がなるなるということになります。
肩関節の屈曲筋と伸展筋について、詳しく見るにはこちらをご覧ください。
肩関節の屈曲に作用する筋肉の起始・停止・支配神経の解説はこちら
肩関節の伸展に作用する筋肉の起始・停止・支配神経の解説はこちら
手技を行う上で、これらの筋の細かい部分を完璧に覚える必要はありませんが、走行や働きをイメージするだけでも、手技の理解が深まります。
肩関節の屈曲筋を調整する手技を行う
検査でどちらの肩関節の屈曲筋が緊張傾向にあるかを判断できたら、手技を行います。
今回の手技は、肩関節の屈曲筋を調整することが主な目的ですが、屈曲筋だけでなく以下の様に、複数の箇所への刺激を考えます。
- 肩関節の屈曲筋の弛緩
- 同側の伸展筋の緊張
- 反対側の伸展筋の弛緩
文字にすると少し複雑ですが、検査で得た情報をもとに、緊張した筋には弛緩させる方向に、弛緩した筋には働きを促す方向に考えて手技を行います。
肩関節屈曲筋を調整する手技の手順
まず術者は肩関節屈曲筋の緊張側に立膝でポジションを取ります。
そこから、相手の手を取り持ち上げて肘を保持し、手を反対側の鎖骨下に置いてセットします。
術者は、鎖骨下にある相手の示指に軽く押圧を加え、相手の指越しに大胸筋に軽い刺激を与えます。
次に術者は保持している相手の肘を、呼吸のタイミングを見ながら軽く持ち上げるように動かします。
そのまま4・5呼吸キープして、再び呼吸のタイミングを見ながら、上肢を元の位置に戻します。
これで手技の手順は完了です。
手技が終わったら、最初の検査と同じ手順で肩関節の屈曲可動域を調べます。
手技の効果があれば、緊張した肩関節屈曲筋と、弛緩していた伸展筋のバランスが整います。
左右で可動域を比較してみても、反対側との差がなくなっているのが確認できると思います。
手技の注意点
この手技は、肩関節を大きく動かす手技ではありません。
筋肉に極端な伸張を与えたり、強く押圧するわけでもなく、ゆっくりと操作する手技です。
特に鎖骨下は、筋や脂肪が少なく繊細な場所なので、刺激量が少なくなるように注意しましょう。
また、手をセットする過程で肩関節を捻ったり牽引したりしてしまうと、思ったように鎖骨下に相手の手がこないので、まっすぐ持ち上げることができるように練習しましょう。
術者の姿勢は、片膝立ちで不安定になりやすい姿勢ですが、あまり身体が前に倒れてしまうと、受け手は圧迫感がありますし、何より体重が手に乗ってしまうと、自然と圧が強くなってしまいます。
重心を中心にキープしたまま、手は軽く操作ができるように、立ち位置や力の入れ方を工夫することが大切です。
今回の手技のまとめ
今回の手技は、肩関節の屈曲筋を調整する手技でしたが、可動域を増やしていくというよりも、緊張が強い筋の働きを抑える目的で行います。
特に、肩関節の屈曲筋が過度に緊張すると、身体の中心から遠心方向に引っ張られるので、肩関節の動揺性が広がり、トラブルを起こしやすくなります。
また、連動して僧帽筋が緊張してきたり、肩甲骨が上がってきたりと、屈曲筋の緊張側ならではの問題もあります。
そういった過度な緊張を抑えるためにも、反対側の上肢とのバランスをとるためにも、積極的に使いたい手技です。
繊細さ操作が求められる手技ですが、しっかり練習して身につけましょう。