2018年5月の東京セミナーは下肢のローリングを行いました
2018年5月の東京手技セミナーは下肢のローリングを行いました。
手技の特徴
この手技の特徴として、検査の情報を元に手技を組み立てないことにあります。
手技の前に検査はしますが、そのまま手技をして、結果どうなったか?の再検査をするというシンプルな手技です。
手技の目的
どの手技も全身の骨格筋を左右対称に機能させる事が一番の目的です。
各手技毎に刺激を入れる筋肉や影響を与える関節が違います。
今回の下肢のローリングは、受け手の足関節(足首)や母趾等を掴み、左右均等に舟を漕ぐような金魚運動をする手技です。
受け手の筋収縮をさせずに他動運動で関節に運動を与えることが出来ます。それにより、約260もの関節を同時に動かすことが出来ます。
綺麗に左右対称性に受け手の身体を動かすことが出来れば、全身の骨格筋の緊張差が減ります。
施術後の確認は目視では不可能です。四肢の検査でしか確認出来ません。施術前の四肢の左右差と比べ、左右対称に機能していれば目的は達成です。
手技のポイント
座るポジション
術者の座るポジションにより、手技がやりやすいか決まります。受け手の膝に近かったり、つま先よりに位置しても正しいローリングは出来ません。
左右の足関節のライン上が術者の真ん中くらいにくると一番やり易くなります。
足関節を添える感覚
ローリングをするためには、受け手の足関節を握る必要があります。受け手の身体全体を動かす必要があるので、どうしても握るグリップ力が強くなりがちです。しかし強く握れば握る程、受け手の身体に筋肉は弛緩しずらく、左右にゆらゆらと金魚運動をしようとしても想い通りに操作出来ません。
受け手の足関節を上からそっと添える感じで足関節を包み込んでローリングすると、受け手の身体全体が動かし易くなり、筋肉の緊張差を改善しやすく出来ます。
呼気でスタート、呼気で終わる
手技は受け手の呼気時に下肢を動かし始め、ある一定の間動かし続け、最後は呼気で終了します。
ある一定の間とは、手技を始めて徐々に筋肉の緊張差が少なくなると脊柱の椎間関節などの動きが出始め、自然と胸郭の動きも大きくなっていきます。術者の持っている手の感覚も、最初は動かし辛く重く感じますが、受け手の身体が連動して動くようになれば軽く感じます。このような変化を感じたら動きを止めても大丈夫です。
臨床での使い方
有効的な使い方
・ぎっくり腰など疼痛がひどく、四肢の検査が十分に出来ず筋肉の情報が得られない場合。
下肢のローリングが出来れば、疼痛の改善とそれにより正確な検査が出来る状況にすることが出来ます。
・麻痺など器質的疾患により正常な検査が出来ない場合。
例えば、脳梗塞後の片麻痺の患者さんで施術を繰り返していくうちに検査の分析ができるようになりますが、施術回数が少ないうちは判断出来ない場合は多々あります。色々試しながら筋肉の分析を進めますが、その施術で最後に揃えようと思ったら下肢のローリングは使い易いです。
・2ヶ月〜1歳ぐらいの赤ちゃんの施術の場合。
赤ちゃんは通常の検査は出来ません。1歳半過ぎて肩関節の検査が辛うじて出来るかどうかです。よって検査を必要としない下肢のローリングなどはとても有効です。
・極端に筋力低下している高齢者。
通常の手技は筋肉を伸長させたり、他動的な関節運動を多く用います。しかし筋力低下が激しい高齢者は施術後に筋疲労を起こし、翌日動けないほどの筋肉痛が起きたりします。
その場合はゆっくりのスピードでローリングをすることで、高齢者の動きや疼痛の変化が起き易くなります。
基本的に使用しない場合
・めまい、吐き気、ふらつき等の症状がある場合。
事前に分かっている場合この手技の選択はしません。
下肢のローリングを行い、上記の症状を訴える場合もあります。その場合は即止めます。
・膝に人工骨が入っている場合
試しに短い目に行ってみて、変化が見られない場合は使わないようにしています。経験上では良い結果が少ないので他の手技で補います。
セミナー後記
今回の手技は、比較的簡単に臨床に取り入れられる手技です。
しかし、大人と子供、男性と女性、身長と体重など受け手が変わると動かし方も全く違います。そして身体の歪みが酷い場合と比較的揃っている場合でも違いがあります。
セミナーでも受け手が変わると思うように操作出来ずに苦労していました。これも経験すれば出来るようになります。
最初は無駄な力が入り過ぎて動きがぎこちないですが、何回も繰り返すうちに力の抜き方などをマスター出来るようになります。